純度100パーセントの暗闇の中で、過ごした90分。見えない世界は心地よいゼロの時間。白杖、芝生、手のぬくもり。どの電車に乗ってもスペースというスペース全てに埋め尽くされた広告が、この世界では一つも飛び込んで来ない。心地いい。
肩書きも経歴も、外の世界に置いてきた14歳から72歳までの8人が、手探りで、白杖頼りで、暗闇の部屋から部屋へ。草の香り、芝生の柔らかさ、人のぬくもりを、いつもより感じるのは、視覚がシャットアウトされて、他の感覚が研ぎ澄まされるからだそうだ。
そういえば、昔、大阪のかずくんが言っていた。
「人間が頼りにするのは、視覚から得る情報が9割やねん。じゃあ俺ら見えない視覚障害者は、他の人より9割人生損してるかっていうと、そうではないねん。視覚がないぶん、他の感覚が、その9割を補おうとするねん。」と。
そのことを思い出しながら、かずくんたちの感覚を探しながら、僕はだんだんと、この暗闇の中を心地よく感じ始めていた。この空間、まだ出たくない!
暗闇の部屋をいくつか通った後、最後は暗闇のカフェで飲み物とお菓子をたべたり、今日が誕生日、という61歳のメンバーにハッピーバースデーを歌ったりしなから、初めて会った8人と気づきを話し合ったりした。
14歳の中学二年生は、お母さんの友達から、招待券をプレゼントされて、来たそうだ。素晴らしいプレゼントだ。
暗闇から出て、都会の道に一歩踏み出したとき、入った時にはまったく気付かなかった花の香りがした。研ぎ澄まされた感覚がまだ残っているとは。びっくり。
ダイアローグインザダーク、おそるべし!
オススメです。